4書体の数字の見本です。画像ではなく Web フォントなので、文字を書き換えて試せます。

蛍光表示管は、1966年に伊勢電子工業(現・ノリタケ伊勢電子)の中村正らが発明した日本発の表示技術です1。

電卓の表示には、それまで米国製のニキシー管が使われていました。1967年12月、シャープ(当時は早川電機工業)が蛍光表示管を初めて搭載した電卓「CS-16A」を発売し2,3、その後の「電卓戦争」の時代に電卓の表示部として広く使われるようになりました1。需要が急増すると、伊勢電子工業は VFD の特許を日本電気(NEC)と双葉電子工業にライセンスし、両社も VFD を生産しました3。

VFDigit は、この時代の電卓の VFD に表示された数字の書体を模しています。書体ごとに、元になった VFD のセグメント(数字を形づくる発光部分)の数と配置が異なります。

シャープ(当時は早川電機工業株式会社4)が1967年12月に発売した電卓「COMPET 16(CS-16A)」5 などで使われた VFD「DG12B」を模したフォントです。DG12B は伊勢電子工業が最初に量産した VFD で、早川電機工業は1967年9月に CS-16A への採用を決めました3。日本電気製や双葉電子工業製の同等の VFDNEC・双葉が VFD を生産したことは確認済み (ETHW)。DG12B と同等の製品があるかは未確認 もあるようです。また、DG12B より小さい「DG10B」6 もあり、両者は微妙に書体が異なるようですが、両方を模したフォントになっています。

数字部分は 9セグメントで、「4」のときにしか点灯しないセグメントがあります。

  • カンマと小数点(ピリオド)は、数字と組み合わせたときに合字(リガチャー)となり、VFD と同じ位置に表示されます。
  • セグメントをすべて点灯したグリフを私用領域の U+E000 に、セグメント a〜i を U+E001〜U+E009 に割り当てています。

「6」には別の形も用意しています。OpenType の文字異体(Character Variant)の cv01 を有効にすると切り替わります。上が通常の形、下が cv01 の形です。

この書体に魅せられて、LED で再現しようとしている人もいるようです(Beautiful Display | Hackaday.io)。

参考情報

シャープの電卓「EL-8(通称 ELSI-8)」などで使われた VFD を模したフォントです。EL-8 の発売時期は、資料によって1970年7とも1971年初頭8ともされています。VFD は伊勢電子工業の Itron「DG10L」です7。「DG10L2」という型番の同型DG10L2 を使った時計キットが販売されていた形跡はあるが、確認できたのは偽の通販サイトだけ。メーカーと、DG10L と同型かは未確認の VFD もあるようです9。

数字部分は 8セグメント8で、DG12B の 9セグメントから「4」専用のセグメントがなくなっています。DG12B より小さい VFD で、同じ大きさにそろえると少し太い書体になっています。

  • 元の VFD にはカンマ付きのものはないようですが、VFDigit 9A と同じカンマのグリフを収録しています。
  • 小数点(ピリオド)とカンマは、数字と組み合わせたときに合字となり、VFD と同じ位置に表示されます。
  • セグメントをすべて点灯したグリフを私用領域の U+E000 に、セグメント a〜h を U+E001〜U+E008 に割り当てています。

VFDigit 9A と同じく、「6」の別の形を cv01 に割り当てています。上が通常の形、下が cv01 の形です。

参考情報

1969年に発売されたオムロン(当時は立石電機株式会社10)の電卓「OMRON 1210」11 などで使われた VFD の書体を模したフォントです。OMRON 1210 の表示管は手書き風の独特な書体で、オムロン独自のもの(オムロン製かもしれない)とされています12。

VFDigit 7A は、VFD「DG10H」(NEC 製13)の書体を元にしています。Old Calculator Web Museum に載っている OMRON 1210 の写真12 では表示管に「123456789012」が表示されていて、DG10H の数字と見比べると同じ形に見えます。ただし、OMRON 1210 の表示管が DG10H だったのかOMRON 1210 の写真の数字と DG10H の数字の形が一致することは確認済み。1210 の表示管の型番やメーカーを示す資料は見つかっていない (CALCUSEUM は ITRON、Old Calculator Web Museum はオムロン製かもしれないとしている)は分かっていません。CALCUSEUM では、表示管は「ITRON」(伊勢電子工業のブランド)とされています11。

数字部分は 7セグメントですが、一般的な 7セグメントとは配置が異なります。

  • 小数点(ピリオド)は、数字と組み合わせたときに合字となり、VFD と同じ位置に表示されます。
  • セグメントをすべて点灯したグリフを私用領域の U+E000 に、セグメント a〜g を U+E001〜U+E007 に割り当てています。

参考情報

VFD の DG12H・DG12H1・DG10A の書体を模したフォントです。いずれも伊勢電子工業(Itron)製です14,15,16。一般的な 7セグメントと同じ配置で、斜体になっており、上端と下端のセグメントの左端が湾曲しているところが特徴です。

数字のほか、7セグメントで表現できる英字と記号も収録しています。英字は Seven-segment display character representations、記号は Seven-segment display を参考に割り当てています。

  • 小数点(ピリオド)は、数字と組み合わせたときに合字となり、VFD と同じ位置に表示されます。
  • 「=」は上付き文字(OpenType の sups)にすると上付きの「⁼」になります。
  • セグメントをすべて点灯したグリフを私用領域の U+E000 に、セグメント a〜g を U+E001〜U+E007 に割り当てています。

「0」「1」「6」「7」「9」と小文字「i」には別の形も用意していて、cv01 を有効にすると切り替わります。上が通常の形、下が cv01 の形です。

参考情報

プロ生ちゃんの X(旧 Twitter)アカウントに、VFD 単管時計の投稿があります。

VFDふぁんから、DG12B・DG10B のカタログと写真をいただいたので公開します。

写真の大きい VFD が DG12B で、小さい方は類似した書体の VFD(型番不明)です。写真提供: VFDふぁん(画像をクリックすると原寸で開きます)

作ってみましたが、VFD の実物はそれなりの大きさ(2cm 前後)があるためか、PC で通常の文字として表示するには細く小さくなってしまいます。また、昔の電卓に使われていた書体という背景を共有していないと、意味の分からないフォントだと思います。デザインが微妙なところもあるので、気が向けばアップデートするかもしれません。

次のような資料を提供していただける方は、GitHub の Issues でお知らせください。

  • 関連する電卓の写真
  • 実物の VFD のセグメントの形が分かる高解像度の写真
  • 「出典調査中」の印を付けた記述の出典
  1. 蛍光表示管 - Wikipedia(2026年9月23日閲覧) ↩ ↩2

  2. シャープ ALL IC コンペット CS-16A | 産業技術史資料データベース(国立科学博物館 産業技術史資料情報センター。「表示素子を、従来一般的であった米国製のニキシ管に替え、国産技術である新開発の蛍光表示管を初めて採用した」) ↩

  3. Milestones:Vacuum Fluorescent Displays, 1967 | Engineering and Technology History Wiki(IEEE マイルストーン。2026年9月23日閲覧) ↩ ↩2 ↩3

  4. シャープ - Wikipedia(「早川金属工業・早川電機工業時代」の節。2026年9月23日閲覧) ↩

  5. Sharp’s early desktop calculator | 電卓博物館(Internet Archive の2021年1月13日の保存版) ↩

  6. 蛍光表示管、DG10B | 電子工作の部屋 ↩

  7. John Wolff’s Web Museum - Sharp EL-8 and EL-8M ↩ ↩2

  8. EL-8 - Wikipedia(2026年9月23日閲覧) ↩ ↩2

  9. 「DG10L2」を使った蛍光表示管の時計キットが販売されていた形跡があります(商品説明では、VFD は双葉電子工業製)。ただし、2026年9月23日の時点で確認できたのは、元の販売ページを複製したとみられる偽の通販サイトだけで、元のページは見つかっていません。 ↩

  10. OMRON desktop calculator | 電卓博物館(Internet Archive の2021年10月28日の保存版) ↩

  11. CALCUSEUM OMRON: 1210 (version-1)(「Year: sep-1969」「Display: Type = Tubes: ITRON」) ↩ ↩2

  12. WANTED - Omron 1210 Desktop Calculator | The Old Calculator Web Museum(「It seems that the display tubes used in the Omron 1210 were unique to Omron (perhaps manufactured by them)」。表示管が点灯した OMRON 1210 の写真がある) ↩ ↩2

  13. 蛍光表示管、VFD | 電子工作の部屋(VFD の一覧ページ。「DG10H (NEC)」) ↩

  14. Ziffern- und Zeichenanzeigen - VFD-Anzeige DG12H(「Die VFD-Anzeigeröhre DG 12H von Iseden」) ↩

  15. File:DG12H1.jpg | Wikimedia Commons(「Manufactured by Noritake Itron Corporation Japan, 1970s」) ↩

  16. 蛍光表示管、VFD | 電子工作の部屋(VFD の一覧ページ。「DG10A (ISEDEN)」) ↩