ポケトロニクは、キヤノンがテキサス・インスツルメンツ(TI)と共同で開発した「電子ポケット計算機」。キヤノン初の LSI を使った電卓で、1970年4月に世界3か国で同時に発表し、同年10月に国内で発売した1。演算素子は MOS 型の LSI 3個で、12桁23。コードレスで持ち運べる4。

数字の表示管の代わりに、感熱式のサーマルプリンターで結果をテープに印字し、それを本体の窓から読む23。電卓に感熱式の印字が使われたのは、これが最初だった2。

『電波科学』1971年5月号の連載「私は知りたい!」は、キヤノンの開発部の2人に仕組みを聞いている。3個の LSI はそれぞれ演算、全体の制御、タイミングを受け持ち、印字はテキサス・インスツルメンツ製のシリコンのサーマルヘッドで、5行4列の20ブロックの組み合わせで数字と英字を感熱紙に焼き付ける。表示管の電卓と違って足し算の途中の値は出さないが、途中の経過がテープに残るのがよいところだという5。

名前は、発表の後に公募で決めた。1970年5〜7月にネーミングを募集し16、9月10日の選考抽選会で「ポケトロニク」に決まった7。

1971年3月には、第1回軽機械デザインコンクールで、日本機械デザインセンター賞と理事長賞を受けている8。

ロゴタイプは、キヤノン事務機販売の広告に使われている。『S-Fマガジン』のほか、『マネジメント』1971年6月号の広告にもある910。週刊誌にも広告が出ている(『週刊現代』1971年3月18日号、『週刊新潮』1971年5月15日号)1112。

ネーミングを募集した1970年7月の広告には、名前が決まる前なので、まだこのロゴタイプはない。この広告では、キヤノンの電卓のブランド名「キヤノーラ」のロゴを使っている6。キヤノンは1964年に発売した最初の電卓から、この名前を使っていた13。

  1. キヤノン史編集委員会 編『キヤノン史:技術と製品の50年』(キヤノン、1987年12月)p.81。国立国会図書館デジタルコレクション(個人向けデジタル化資料送信サービス) ↩ ↩2

  2. 瀬尾悠紀雄「電子式卓上計算機技術発展の系統化調査」(『国立科学博物館技術の系統化調査報告』第6集、国立科学博物館、2006年3月)p.79〜80。国立国会図書館デジタルコレクション ↩ ↩2 ↩3

  3. 日本事務能率協会 編『ビジネスマシンダイジェスト 1971年版』(日本事務能率協会、1971年)p.405〜406。国立国会図書館デジタルコレクション(個人向けデジタル化資料送信サービス) ↩ ↩2

  4. 「65. キヤノン・ポケトロニク」(『工芸ニュース』39巻2号、工業技術院産業工芸試験所 編、丸善、1971年8月)。「サーマルプリンター(感熱紙使用)による印字式を採用したコードレス・ハンディタイプ電子演算機としては最小のもの」。国立国会図書館デジタルコレクション(個人向けデジタル化資料送信サービス) ↩

  5. 「私は知りたい! キャノンポケトロニクの巻」(回答 村田穣・木村武彦、質問 橋本健)『電波科学』453号(1971年5月)p.223〜225 ↩

  6. キヤノン事務機販売の広告「Canon電子ポケット計算機――発表」(『事務と経営』22巻262号、日本経営協会、1970年7月)p.80。ネーミング募集の広告。国立国会図書館デジタルコレクション(個人向けデジタル化資料送信サービス) ↩ ↩2

  7. 『キヤノン史:技術と製品の50年』(キヤノン、1987年12月)p.396〜397(年表、1970年9月10日「ポケット計算機ネーミング募集の選考抽選会開催、ポケトロニクと決まる」)。国立国会図書館デジタルコレクション(個人向けデジタル化資料送信サービス) ↩

  8. 『キヤノン史:技術と製品の50年』(キヤノン、1987年12月)p.398〜399(年表、1971年3月2日)。国立国会図書館デジタルコレクション(個人向けデジタル化資料送信サービス) ↩

  9. キヤノン事務機販売の広告「ポケトロニク菌株」(『S-Fマガジン』1971年8月号、早川書房)裏表紙 ↩

  10. キヤノン事務機販売の広告「マネジメントは思想を系数化できることも必要だ。」(『マネジメント』30巻6号、日本能率協会、1971年6月)。国立国会図書館デジタルコレクション(個人向けデジタル化資料送信サービス) ↩

  11. キヤノン事務機販売の広告『週刊現代』13巻13号(1971年3月18日)p.66・p.67 ↩

  12. キヤノン事務機販売の広告『週刊新潮』16巻19号(1971年5月15日) ↩

  13. 「電卓事業の歴史と今後の向かう先を探る - キヤノン、初の電卓「キヤノーラ130」の発売から50年の節目」(マイナビニュース、2014年10月20日。2026年9月30日閲覧) ↩