「スパイメモ」は、サンスター文具が出した子ども向けのスパイ用品。水に溶ける紙のメモ帳を中心に、団員証やバッジ、変装用のシールなどをセットにしたもので、その後、シリーズとして後継の商品が出た1。「スパイ手帳」「スパイ手帖」は、当時から使われていた通称23。

『子供の大科学』の著者の串間努がサンスター文具に問い合わせたところ、開発したのは同社の伊藤幸信専務だった。アメリカのテレビドラマ『スパイ大作戦』が日本でも放送されるという『週刊新潮』の記事を読み、スパイブームが来ると予想して考案した。キャッチフレーズは「消える手帳」。1969年(昭和44年)に関東・東京地区でテスト販売し、売れ行きがよかったので、同年12月20日から全国で発売した。定価は150円1。黒沢哲哉『ぼくらの60〜70年代宝箱』は、「1969年ごろ、学校前の文具店で」売り出されたとしている4。

講談社の『週刊ぼくらマガジン』の創刊号(1969年11月)には、「新発売!」「テレビ宣伝中」とうたうカラー広告が載った。商品名は「消える手帖 サンスター スパイ メモ」(SUN-STAR SPY MEMO)で、150円。水にとけるメモ(ドクロマーク)、ノーカーボン紙(ハーケンマーク)、石けん水にとけるメモ(コーモリマーク)、色つきメモ(ピストルマーク)の4種類の紙に、ワッペン、団員証、スパイシール、モールス信号の下じきが付く5。同誌には、「サンスタースパイメモ」と添えた「ぼくらのスパイ大作戦」という欄があった。読者の投稿「スパイ通信」や、読者への課題「スパイ指令」を載せ、スパイメモを抽選で贈っていた567。

発売後、水に溶ける紙を使った「スパイ手帖(忍者手帖)」は、半年で5億円売れたと、『近代中小企業』1971年7月号は伝えている2。翌1972年の長谷川藤吉郎『拡販部隊出動せよ』では「三か月間に、五億円」3。

シリーズは、次の8つの商品が確認されている8。第2弾のスパイライセンスは、1970年夏に東京で先に発売されたとみられる。『週刊ぼくらマガジン』1970年8月2日号のプレゼントの頁(提供・サンスター文具)は、200円の「新スパイメモ」を「東京地方だけで発売中」、「全国発売は、9月中ごろ」とし、中身を「水にとける紙、シグナルミラーなど」としている9。水に溶ける紙とシグナルミラーは、第2弾のスパイライセンスの中身に挙がっている10。第3弾以降の各商品の発売時期は不明。

  1. スパイメモ(ビニール手帳)
  2. スパイライセンス(ビニール手帳)
  3. スパイパック(ビニール手帳、ペンが付く)
  4. スパイ・ザ・パック(ブリスターパック包装)
  5. プロスパイ・ノート(ノート式)
  6. スパイセット(缶入り)
  7. スパイヘンシンセット(紙とシール主体)
  8. スパイアタッシュ(箱入り)

第5弾の「プロスパイ・ノート」は、それまでの手帳と違って、装備品が一切付かないノート式。スパイに関する読み物と、四角い窓の空いたカードで読む「暗号」が中心だった。赤版と青版の2種類があり、スコア暗号カードも「ブラック」と「ブルー」の2種類になっている11。

子供の大科学 : 「あの頃」遊んだふしぎ玩具、教材

第4章「ぼくらは探偵からスパイになった!」(p.158〜183)。スパイ手帳の開発の経緯(p.164〜165)と、第1弾から第8弾までの「スパイシリーズアイテム表」(p.176〜)。第5弾のプロスパイ・ノートは p.181。

  1. 串間努『子供の大科学:「あの頃」遊んだふしぎ玩具、教材』(光文社文庫、1997年)p.164〜165 ↩ ↩2

  2. 豊沢豊雄「新・アイデアの泉 大きくなあれ、小さくなあれ」(『近代中小企業』6巻9号、中小企業経営研究会、1971年7月)p.43。国立国会図書館デジタルコレクション(個人向けデジタル化資料送信サービス) ↩ ↩2

  3. 長谷川藤吉郎『拡販部隊出動せよ:市場奪取トータル作戦』(日本生産性本部、1972年)p.134〜135。国立国会図書館デジタルコレクション(個人向けデジタル化資料送信サービス) ↩ ↩2

  4. 黒沢哲哉『ぼくらの60〜70年代宝箱』(いそっぷ社)p.72 ↩

  5. サンスター文具の広告と「ぼくらのスパイ大作戦」『週刊ぼくらマガジン』1巻1号(1969年11月) ↩ ↩2

  6. 「ぼくらのスパイ大作戦」とサンスター文具の広告『週刊ぼくらマガジン』1巻3号(1969年12月9日)p.248 ↩

  7. 「ぼくらのスパイ大作戦」とサンスター文具の広告『週刊ぼくらマガジン』2巻2号(1970年1月6日)p.250〜251 ↩

  8. 串間努『子供の大科学』(光文社文庫、1997年)p.167 ↩

  9. 「スパイコーナー」『週刊ぼくらマガジン』2巻33号(1970年8月2日) ↩

  10. 串間努『子供の大科学』(光文社文庫、1997年)p.177〜178 ↩

  11. 串間努『子供の大科学』(光文社文庫、1997年)p.181 ↩